藍野病院(大阪府茨木市)後山尚久先生

生活習慣病の好発年齢
HRTと漢方処方を適切に組み合わせて

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更年期の時期である40~60代は、生活習慣病の好発年齢でもあります。血圧やコレステロールの数値にも変動が起こりやすく、自覚症状がなくても検診などで「再検査」と言われ、不安を感じることもあるでしょう。一見更年期とは関係がなさそうなこれらの症状ですが、実は、女性ホルモンであるエストロゲンの減少や、更年期世代の生活ストレスの影響を大きく受けているといいます。更年期医療と生活習慣病のかかわりにも詳しい藍野病院の後山先生にお話を伺いました。

 


更年期は血圧もコレステロール値も上がりやすい

なぜ、更年期に血圧やコレステロールの値が上がりやすくなるのですか

体内のエストロゲンは、子宮や乳腺だけでなく全身でさまざまな働きをしています。中でも肝臓では、善玉コレステロ-ル(HDL)を増やし悪玉コレステロ-ル(LDL)を抑える働きがあることから、エストロゲンが減少する閉経前後には、LDLが体内に多くなるのです。心疾患だけではありません。LDLが血管内にたまることで動脈硬化がすすみ、抹消の組織に酸素が送れなくなります。すると、冷えが強くなる、筋肉の力が弱くなる、痴呆がすすむということも起こりやすくなります。

 


「高血圧」と診断されたら、生活の見直しも大切です

家庭や仕事の問題など、生活ストレスが影響することもありますか

更年期は夫婦や親子、介護の問題、職場における人間関係など、30代までは経験しなかったストレスを感じる時でもあります。このことが体調にどう関係するかということですが、たとえば血圧は、喜怒哀楽に非常に左右されます。忙しさや人間関係のストレスなどによる緊張が長く続いてリラックスできない状態では、心拍数が上がり、血圧も上がります。いわば、常に戦闘状態にあるようなものなのです。

血圧と生活の関連というと、食べ過ぎ、飲みすぎ、塩分制限など食生活の改善がよく言われますが、ストレスも大きな要因なのです。それまで正常値だった血圧が上がり気味、という時は、「最近何かストレスになることがあったかな」と考えてみましょう。そして、できるだけリラックスできる時間を作ることも大切なことです。

 

コレステロール値はどれくらいが適正なのですか

前述のようにLDLが多いとさまざまな悪影響が出てきます。そこで治療基準としては、総コレステロール220mg/dLを目安に考えるとよいでしょう。最近はコレステロール値を非常によく下げる薬も出ているので、かかりつけ医と相談してよい状態を保ちたいですね。

 

こうした内科的な不調も、更年期外来を受診してよいのですか

ほてりや頭痛などいくつかの更年期症状があって、さらに血圧やコレステロール値が高いという時は更年期専門外来を受診するとよいでしょう。更年期専門外来では、患者さんの15~20年後の健康な姿を念頭に置き、骨粗しょう症や動脈硬化の予防もしながら今の症状を治療していきます。もちろん、高血圧症やその他の生活習慣病などの家族歴がある場合は、その専門医とも十分コンタクトをとっていく必要があります。

 


漢方とHRT

先生は漢方薬を積極的に処方していらっしゃいますが…

漢方薬は、数千年の昔から「男性用」「女性用」と性差を意識して使い分けされてきました。風邪薬でも、女性向きや男性向きがあったりします。ですから、更年期にさまざまな不定愁訴が同時に現れる理由などは漢方医学的な理論を用いると、とてもうまく説明できます。「すごくドキドキしてて頭痛がある」という時、頭痛とドキドキには一見何の関係もないように見えますが、漢方医学であれば、一つの病態で全部説明できるのです。

また、漢方治療は全人的医療であり、大きな特徴は、「貴女の治療は貴女だけのもの」というフィットサイズ医療としての考え方です。ですから女性医療を行っていく上で、漢方医学的なアプローチはとても役に立つと思っています。

 


HRTは西洋の漢方薬のような発想

HRTにも、漢方と似たところがあります。エストロゲン(女性ホルモン)というのは、女性の体における作用ポイントがものすごく多いのが特徴です。女性生殖器、乳腺、子宮内膜などはもちろん、コレステロールのコントロール、骨を作る代謝やそのスピードにも関与しています。脳の記憶、認知にもエストロゲンは関係しているということがわかっているのです。

漢方は作用ポイントがあまりにも多いのでまだ全貌が分かっていない部分がありますが、エストロゲンも似たところがあります。そこで、エストロゲンなどの女性ホルモンを投与するHRT(ホルモン補充療法)は西洋の漢方薬のような発想といえるでしょう。

 

漢方とHRTには思わぬ共通点があるということ。これらの療法をうまく組み合わせて症状を改善し、健康を維持していきたいですね。

 


プロフィール:後山尚久(うしろやまたかひさ)先生

1979年
大阪医科大学卒業
1989年
米国、オクラホマ州立大学教官
1996年
大阪医科大学産婦人科助教授
主な著書「これからの更年期・閉経期の外来診療」(94年ライフサイエンス)「更年期 からだと心の変化で悩む人に」(02年、NHK出版)他。日本産婦人科学会代議員、日本東洋医学会関西支部幹事、日本更年期学会幹事、他。

 
医療法人恒昭会 藍野病院婦人科

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