海外更年期状況調査報告-1. 更年期治療の国際比較(2008年4月)

はじめに

worldいま日本の更年期医療は、約2100万人の人口を擁する更年期世代女性(40-64歳)にとって、更年期症状の治療はもとより生涯を通したQOL向上のためにも重要な医療と注目されています。しかし、更年期医療機関の設置総数はまだ少なく、また更年期症状の治療に有用とされ世界的に導入されているHRT(ホルモン補充療法)の普及率もまだ他の先進諸国と比べると非常に低い状況です。
日本女性の寿命も増加するに従って、女性の中にも自分自身の長期的な健康管理の意識が高まっており、当会で11年間行ってきた電話相談から見ても(1)、更年期女性の更年期医療への関心や、治療法や更年期医療機関等について詳しく知りたいなどの声がこの数年で大きく増しています。
そこで、このたび海外の更年期医療の実情を具体的に視察し、日本との比較・その背景などを分析し、日本の更年期女性の健康管理・増進並びに更年期医療の普及・啓発の一助となることを願い、女性の視点で台湾、北欧などの調査を行うこととなりました。

 


1.更年期治療の国際比較

img-kai-1_2更年期症状の治療にホルモン補充療法(HRT)が導入され、各国においてその普及が進んで久しい状況です。HRTの普及率は1980年代から1990年代初頭にかけてオーストラリア、イギリス、米国において大きく増加しました(2)。イギリスではHRT普及が7年間に10倍増加し(3)、米国ではHRT普及の増加の背景には、使用者の収入・学歴と密接に関連があることが分かっています(4)。一般的に更年期に対する捉え方や症状の程度は各国で文化的・人種的に異なると考えられていますが(5)、これら各先進諸国で更年期医療が進んだ要因として、どのようなアプローチが採られたのでしょうか。行政、医療提供者、関連団体・メディア、一般女性にどのような働きがあったのでしょうか。
日本でのHRT普及率は、わずか1.5%と報告されています。これは米国の40%、オーストラリア66%と比較すると先進諸国の中で最も低い状況です(図1)。また、アジア諸国の中で比較しても、台湾では17.4%、韓国では8.8%であり、日本における普及率はアジアの中で最も低いことが分かっています。ちなみに北欧・西欧、北米とオーストラリアでは、50歳から54歳までの更年期女性の半分から4分の1の人口がHRTを使用していると考えられます(1)。一方で南欧・東欧・中欧では普及率はこれよりも低い状況です(2)。このことから、HRTの普及は、国の社会経済的状況に大きく関係していることも考えられます。

 


2.本調査の趣旨と生じる効果

諸外国でのHRT普及状況、更年期医療を取り巻く状況、社会的背景等について文献調査・視察調査を行います。本調査により生じる効果は、各国で採られている各アプローチを日本の医療従事者や一般女性に知らしめることで、HRT・更年期医療への親しみと理解を深め、受診のきっかけづくりとすることです。また他国の状況や制度と日本の状況を比較し分析することで、これからの日本の更年期医療策定の際に、情報提供の一つとして貢献できれば幸いです。

 


3.調査方法

訪問予定先の国については、HRT普及率の高い国を大陸ブロックで選び、それぞれ台湾、北欧などを視察します。各訪問国で更年期に詳しい医療機関・HRT-friendlyな施設、行政、団体等を視察する予定です。各国での更年期医療事情を調べ、更年期世代女性の各データを比較すると同時に、普及の背景、医療保険制度等のアプローチ等について調査をいます。また更年期医療の普及が医療費抑制につながったのか、そしてその要因等についてもヒアリングを行います。

 


4.台湾の更年期医療状況について

本視察調査の最初の訪問先として、台湾を予定しています。台湾女性の平均寿命は77.7歳で、50歳以上の女性人口が全女性人口の18.3%を占めています (6)。台湾女性の更年期に対する意識は高く(7)、また台湾のホルモン補充療法使用率は、アジア諸国の中でもっとも高いことが分かっています(8)。訪問前に文献調査や関係者へのヒアリングを行ったところ、台湾には医療が公的にカバーされている「全民健康保険制度」があり、この制度によって更年期医療が保障されています。台湾では更年期医学会が1995年に発足されてから、更年期やHRTに関するセミナーや医療従事者向けの研修会などが頻繁に開催されるようになり、このことがマスコミやメディアの注目を浴びるようになりました(8)。その結果、一般女性の間に更年期やHRTの理解や注目が集まるようになり、HRT使用者も大きく増加しました。HRT使用率は更年期女性人口の約25%にまで上りましたが(8)、WHIの報告以降、ホルモン補充療法の使用率は約15%にまで低下した(8)とも言われています。
 
では、台湾の更年期医療は実際にはどのような状況なのでしょうか。どのような要因によって普及が進み、どのような方策が採られてきたのでしょうか。4月に台湾を訪問し、次号でその報告を詳細に行います。

 


参考文献

1. 三羽良枝他NPO法人メノポーズを考える会 電話相談から見た更年期外来の現状 日本更年期医学会雑誌Vol11.No.1,78 -88,2003.

2. Use of oral contraceptives and hormone replacement therapy in the WHO MONICA project. V.Lundberg et al, Maturitas 48 2004, 39-49.

3. Margarine intake and risk of nonfatal acute myocardial infarction in Italian women. Tavani A. et al. European Journal of Clinical Nutrition 1997; 51:30-2.

4.Correlates of post-menopausal estrogen use and trends through the 1980s in two Southeastern New England communities. Derby C. et al. American Journal of Epidemiology. 1993; 137: 1125-35.

5. Cross-cultural menopausal experience: Comparison of Australian and Taiwanese women.
Shiu-Yun Fu et al. Nursing and Health Sciences 2003, 5,77-84.

6. Demographic characteristics and medical aspects of menopausal women in Taiwan. Son-Nan Chow et al. Journal of Formos Medical Association 1997 vol.96 No.10

7. The perception of menopause among women in Taiwan. Hsien-An Pan et al. Maturitas 41 2002, 269-274.

8. Postmenopausal Hormone Therapy: The Taiwan Experience. Ko En Huang. Japanese Journal of Menopause Society(日本更年期医学会雑誌)Vol12.No.1,58-59,2004.