海外更年期状況調査報告-3.台湾視察その2(2008年5月)

4. 台湾の更年期医療の普及について~インタビューその2

Vol2で述べたように、台湾視察の初日に、台湾・高雄市にある高雄医学大学付属中和記念病院を訪れ、産婦人科教授の李昭雄医師(Dr. Jau-Nan Lee)に台湾の更年期医療普及の背景についてインタビューを行った。
また視察2日目には、台北市内の長庚記念病院(Chang Gung Memorial Hospital)産婦人科教授で、現・台湾更年期医学会理事長の黄國恩医師(Dr. Ko-En Huang)に台湾の更年期医療状況や、WHI後の更年期医療の影響等についてインタビューを行った。

 

(1)各団体による啓発

img-kai3-photo1李医師ならびに黄医師のインタビューをまとめると、台湾におけるホルモン補充療法(HRT)普及率は、更年期医学会設立直後の1995年頃から徐々に上り始めた。2001年時には台湾のHRTの使用率は最高値の約27%であった。この数字はアジア諸国の中でもっとも高く(1)、台湾女性の更年期に対する意識はアジア諸国の中で最も高いと報告されている(2)。
この普及の背景には各組織、つまり学会(医師への啓発等)、婦人団体、政府と各関連団体、製薬会社、メディア(マスコミによる啓発)の働きが大きいと考えられている。

 

●学会による啓発

img-kai3-photo3台湾では、複数の医師により1995年に台湾更年期医学会が設立された。設立後は、更年期医学会の医師が連携して、医師・医療従事者向けに更年期やHRTに関する啓発・教育を頻繁に大々的に行い、また一般女性への啓発についても平行して行った。その結果、一般女性の間に更年期やHRTの理解や注目が集まるようになり、HRT使用者も大きく増加していった。
教育・啓発は主にセミナーの形式を取り、最も多い2001年で年に約400回実施された。これは台湾本土だけでなく、離島においても実施された。
また学会は4月を台湾における「メノポーズ月間」と定め、大規模なセミナーも行われた。これらの効果は非常に大きく、更年期の意識や認識、治療法、リスクとベネフィットなどを婦人科医や一般女性に広く知らせることとなった。一般女性向けに行なった調査では97%の女性が更年期について聞いたことがあり(1)、また更年期の「定義」を知っている女性は57%(1)に上ったことが報告されている。

 

●婦人団体、政府と関連団体、製薬会社による啓発

img-kai3-photo4更年期医療の普及には、台湾政府のサポートも大きく影響していた。台湾の厚生労働省にあたるDepartment of Health(DOH)内の”adult aging healthcare division(中高年の健康局)”が窓口となり、市議会や女性議員、女性団体による更年期普及・啓発活動に補助金を与えた。更に政府が所轄する市立病院の医師・医療従事者も各団体の更年期医療普及プロジェクトに参加し、疫学調査も活発に行われ、学会誌等で発表がなされていた。
また各自治体の地域婦人会も更年期医学会と連携を行っていた。各婦人会は、セミナーやフォーラムの案内配布等を行い、またアンケート調査を実施して女性のニーズ把握に努め、一般女性とのつながりを強化していた。また当会(女性の健康とメノポーズ協会)のような市民団体は現在のところ存在していないとのことであった。
更に、これらの更年期・HRT関連のセミナー・フォーラムの開催は、HRT関連の製薬会社からの企画・運営等への資金援助があったために全国的に集中して展開をすることが出来たとの状況があった。

 

●マスメディアの役割

台湾更年期医学会が主催して精力的に行われた更年期セミナーは、マスメディアの注目を浴びるようになっていた。その結果、更年期についての啓発をマスメディアが協力するようになり、テレビやコマーシャル、広告、新聞など活用し、一般女性・世論への呼びかけが頻繁に行われるようになった。「更年期についての最も一般的な情報源は新聞と雑誌である」との報告もされており(1)、一般女性の更年期に対する意識の高さは、メディアの力が大きく関わったことが伺えた。

 
 

●(2)普及のその後

~WHIの影響~

2001年には27%にまでのぼったHRT普及率であったが、2002年のWHI報道は新聞やメディア、雑誌で大きく取り上げられた結果、HRTのリスクのみが先歩きする形となった。更年期女性はリスクについて心配し、受診者の数は減少していった。また医師の中にもリスクを心配し、HRT処方にためらう傾向も見られた。その結果、普及率は減少し、17%前後となった。
現在は、WHIその後の新たな解析結果がマスコミにより広まり、女性の間にも正しい知識が広まり始めた。更に、HRTを使用していた女性自身がその効果の実感から中止していたがまた再開したい、との声が上がり始め、また増加の傾向が徐々に見られている。女性たち・医師・マスメディアなどのHRTに対する意識は、WHI直後のネガティブなものからポジティブな意識へと変わってきている。

 

~一般女性の認識と受診行動~

img-kai3-photo5台湾の更年期女性が更年期による不調を感じたとき、約70%が婦人科に受診し、約30%が精神科へ行くとのことであった。ちなみに当会が2007年に日本の更年期女性を対象に行った調査と比較すると、婦人科をダイレクトに受診したのはわずか29%のみで、51%の女性が多科を受診しており、ここにも台湾女性と日本女性の更年期についての認識の違いが見られたことは非常に興味深い。

 

~更年期の医学教育と多科での受診~

台湾の医学教育についてインタビューしたところ、医学部では更年期についての授業・教育が行われ、HRTについても処方の仕方、リスクとベネフィット等についてしっかりとした教育がなされているとのことであった。そのため、婦人科だけでなく一般内科や多科でもHRTを処方しており、また台湾国内のすべての産婦人科が更年期の患者を充分に診ることが出来るとのことであった。

 
 

(3)制度とのかかわりについて

台湾の更年期医療普及背景について触れたが、医療制度の中での更年期医療の位置づけ、医療費とのかかわりはどのようになっているのだろうか。次号でお伝えしていきたい。

 


参考文献

1. The perception of menopause among women in Taiwan. Hsien-An Pan et al. Maturitas 41 2002, 269-274.

2. Postmenopausal Hormone Therapy: The Taiwan Experience. Ko En Huang. Japanese Journal of Menopause Society(日本更年期医学会雑誌)Vol12.No.1,58-59,2004.