海外更年期状況調査報告-5. 国際閉経学会 その2(2008年7月)

IMS総会参加レポートその2

今号は、前号に続き平成20年5月19日~23日にスペイン・マドリードにて開催された第12回国際閉経学会総会の報告を行いたい。
当総会のプログラムは、各参加国別の更年期関連医学会、また大陸地区別の更年期医学会(北米閉経学会やヨーロッパ更年期医学会など)がセッションを持ち、5日間にわたって活発な発表を行った。この他にシンポジウム、ランチョンセミナー、イブニングセミナー、トピックごとのセミナー、ポスター発表、またフリーディスカッションなどの各種プログラムが同時進行で展開された。アジア地区としては、アジア・パシフィック閉経学会(Asia Pacific Menopause Federation 略してAPMF)、各アジア諸国の更年期医学会、そして日本の更年期医学会が発表を行った。

 


アジアパシフィック閉経学会~台湾の方策から

img-kai5-photo1APMFは日本をはじめオーストラリア、ニュージーランド、中国、香港、台湾、タイ、韓国、マレーシア、フィリピンなどアジア太平洋諸国の14カ国が加入しており、学会4日目にその発表が行われた。発表のテーマは「アジア太平洋地域の更年期医療の今後の展開」と題し、アジア女性の更年期に関するQOLや、更年期マネジメントのステートメントなどの発表がなされた。その一環として、本年4月に当会が台湾を訪問した際にインタビューした台湾更年期医学会理事長の黄國恩(Dr. Ko-En Huang)長庚記念病院産婦人科教授が「更年期やHRTに関する意識や感情についてアジア女性とヨーロッパ女性との比較」について発表をした。
 
黄教授の発表では、APMF参加国のアジアとヨーロッパの女性を対象に更年期に対する意識調査を行ったところ、アジアの中高年女性の半数以上が何らかの更年期症状を有しており、受診の主訴として主に不眠やほてりが多いことを述べた。更年期医療の受診については、アジア全体の多くの更年期女性が更年期の治療を受けたいと思いながらも、実際に受診をしている率はヨーロッパの女性に比べると少ない。またHRT処方について、アジア諸国の50%以上の女性が、医師から勧められればHRTを使用したいと強く確証していることを述べた。 
 
台湾は、アジアの中で最も更年期医療が普及している国であるが、会場で発表を聴いた筆者は、「台湾では、更年期への意識を更に高めるために現場で何が最も必要だと思うか?」との質問を黄教授にしてみた。黄教授は、「まず一般女性はもちろん、医師への教育と啓発、そしてHRTのベネフィットとリスクについて医師が理解し、正しくカウンセリングできるようにすることである」と答えた。
 
先日の台湾訪問記でも報告したように、台湾ではアジアの中で最も更年期の認識が高くHRTが広く普及した背景として、医師向け・一般女性向けの更年期セミナーが国内で頻繁に行われ、それがマスコミの認識も高めたということ、またセミナー研修の結果、婦人科だけでなく他科の医師も更年期治療・HRTを処方するようになったことが主に挙げられた。黄教授の発表や、筆者からの質問の回答を合わせると、台湾においても医師から患者に十分な内容のカウンセリングがなされ、HRTのリスクとベネフィットが適切に説明されることで国全体の更年期医療の更なる普及につながると予想された。
 
このことは、日本においても、同様であろう。医師を対象にHRTについての研修を更に展開し、一般女性に対してもセミナー等の啓発を頻繁に行い、更年期医療について医療提供者・受診者が正しい知識を得られるように推進していく。これが全国的にまた社会的にも広がっていく。このような感想を黄教授の発表会場を後にして抱いた。

 
 

img-kai5-photo2各国からの参加者で賑わっている様子が伺える。展示会場は天井が高く、デザイン性にあふれた展示を行っているブースが多かった。各ブースでは飲み物等が振る舞われ、参加者が気軽に足を止めやすい作りになっており、日本でセミナーを行う際の参考にもなった。実際に筆者もいくつかのブースに足を向けてみたが、それぞれ特色があり今でも印象に残っている



日本更年期医学会の発表

日本更年期医学会の発表は、総会5日目の最終日午前に行われた。議題は”Lessons from the Japan Nurse’s Health Study(日本のナーススタディから学ぶこと)”とし、座長に日本更年期医学会理事長の水沼英樹弘前大学産婦人科教授、そして前理事長の麻生武志東京医科歯科大学名誉教授を迎え、日本からの発表者を含め計4名の発表があった(林邦彦群馬大学医学部保健学科教授、安井敏之徳島大学病院産科婦人科准教授、久保田俊郎東京医科歯科大学周産・女性診療科教授)。
 
img-kai5-photo3最終日の発表であったので、満を持してというところがあり、日本からの参加者もこの最終日の発表に多く見受けられた。発表内容は、林教授による「日本のナーススタディのデザインと日本女性の罹患率について」、安井准教授は「早期閉経と子宮内膜症との関連について」、そして久保田教授は「日本のHRT状況について」であった。ナーススタディについては、日本女性の健康状況や罹患の状況を把握し、日本女性のエビデンスとなりうることから、今後大いにその発展や活用が期待されると感じた。発表後に会場からも質問が寄せられ、日本の更年期医療の状況に興味が持たれていると感じた。
 
今回の学会総会では、「必要な女性にはホルモン補充療法を使用するのが当然であり、それが女性のQOLに直結している」との意識が広まっていることを前号にも書いた。それに加えて感じた大きなトレンドは、「HRTを低用量で処方する」ということであり、低用量(low-dose)で効果のある処方について、非常に多くの発表やセッションが行われていた。この”low-dose”という言葉は総会のプログラムや発表でも頻繁に見かけた。特に2002年のWHIの報道後、low-doseの薬品開発・研究が各国で行われており、容量の種類が多様になるにつれ、これからの女性の選択肢が増えると思われる。
 
総会では、全体的に更年期医療・HRTについて非常に熱気のこもった発表がなされ、WHI報道後に判明した新たな研究結果を知らしめよう、という意識が発表者の間に共通していると感じた。世界的にも今後の更年期医療の展開に大きな期待が持たれ、ひいては日本の更年期医療の状況もそれに伴って発展していくことができるはずと実感した。そのためにも、継続した啓発活動を、医療従事者・行政・女性に対して提供していかねばならないと考える。