海外更年期状況調査報告-6. 海外のHTコンセンサス(2008年8月)

海外における更年期医療の共通のコンセンサスとは?

当会の「海外の更年期医療状況調査」では、その一環として、これまで台湾に訪問し、更年期医療状況を視察し、またスペインの国際閉経学会に出席し、今後の更年期医療の展開や最新の状況等について考察を行った。
国際学会において非常に印象的であったのは、海外のスタンダードとして、必要であればホルモン療法(HT:今号からHTとする)を使用するのが当然であり、それが女性のQOLに直結しているという意識が広まっていたことである。また医療従事者もHTについては自信を持って処方しており、その上で容量や剤形をどうするか、という啓発の次のステップにいるということであった(詳しくは第4号を参照)。
 
2002年のWHI報道後から6年が経過した現在、国際閉経学会からHT処方に関するステートメントが発表されるなど、HTの容量や種類、また患者のHT開始年齢、継続期間等については不可欠なトピックスと考えられている。そこで、「海外におけるHT治療のコンセンサスは、各国でどのように得られているのだろうか」との視点から、ここである調査を紹介したい。
 
Birkhäuser et al.の研究によると、米国、フランス、ドイツ、イギリス、スウェーデン、ポーランド各6ヶ国の産婦人科医やGeneral Practitioner 計600名を対象に、HTへの意識やリスクとベネフィットに対する意識等について調査をしたところ、98%の医師が「更年期症状は女性のQOLに影響を与える」と回答した(※1)。ちなみにこの設問については、スウェーデンとフランスの医師が最もポイントが高く、100%の回答が出た。この結果は各国でほぼ均一であり、「更年期症状は、QOLだけでなく仕事や人間関係、家族関係にも影響する」と回答している(※1)。
また90%の医師が、「適切な患者に処方した場合、HTのベネフィットはリスクを上回ると確信する」と回答しており、中でもスウェーデンの医師のポイントが最も高く、99%が「ベネフィットはリスクを上回る」と回答している(※1)。全体では97%の医師が、「全体として、自分の患者の大多数はHTからベネフィットを蒙っている」と回答している(※1)。
QOLが更年期女性の健康やライフスタイル等に影響するかについては海外において様々な研究がなされているが、この調査の結果から、医師自身が、HTは更年期女性のQOLに効果的と確信していることが推察された。
筆者が考えるには、女性が治療の際に充分なコンサルテーションを受け、不明な点を明らかにし、その結果HT処方が適切と思われる患者が納得してHTを使用すれば、得られるベネフィットはリスクをはるかに上回るはずである。
 
また、「HTを家族や配偶者、自分自身(女医の場合)に処方するか」については、92%の医師が「自分の近しい人がHTを受けるのに適切であれば、HTを薦める、あるいは処方する」と回答している(※1)。これも、医師が自分にとって大切な身近な人に薦めるということは、医師自身が実際に臨床の現場において効果を認識し、同時に納得しているということを示すのではないか。
最近のトレンドとなっている「低容量の処方」については、82%の医師が「最近のステートメント、あるいは提言について理解している」とし、低容量については、「前向きな方法として認識している」と回答したのは87%の医師であった(※1)。低容量について認識度が最も高かったのは米国の97%であった。各国間で細かい差はあるものの、「最低容量のエストロゲンとプロゲストーゲンがHTの適量と考える」と応えたのは91%の医師であった(※1)。
つまり、当調査対象のうち100%に近い医師が、「低容量のHTの効果は大きく、更年期症状や骨粗鬆症にも効果を与えると同時に、副作用やリスクは最小限に抑える」ことを認識しているのである。

 


WHI後のメディアの報道

また同調査では、HTのマスコミ報道についての設問もあり、「HTのリスクに関するここ数年のマスコミ報道についてどう考えるか」については78%の医師が、「それら報道の内容は正当でない」と回答している(※1)。これについては米国とドイツの医師が最も多く同意しており、95%を示している(※1)。
この結果は、筆者にとって非常に新鮮であり、今後の更年期医療とHTの発展が更に見込めるものと確信した。2002年のWHI報道後から6年が経ち、日本のメディアでもリスクについて様々な報道がなされた。中にはネガティブなメッセージ性が強い報道も多々あったと思われる。しかし、医師自身が「リスクについての報道は正当でない」と確信していることで、今後はポジティブな報道がより一層期待できるのではないか。
 
ここで、HTについてのポジティブな海外メディア報道をご紹介したい。
2004年の”Times Magazine”では、見出しに”HRT cancer fears eased for thousands”とし、「HTによる癌への不安は和らぎ、それによって多くの女性が安堵している」と紹介している(※2)。
また最近のイギリスの”Daily mail online”では、2008年5月に下記の記事が掲載された。
”First a wonder drug, then a danger to health, now HRT is given the ALL CLEAR”(最初は特効薬、次に危険な薬とみなされたが、現在ではHRTの危険性はすべて排除された)(※3)。
詳しい内容としては、「更年期を迎える多くの女性にとってHTは安全である」、と専門家達は明言しており、「これまでのHTによるリスク報道は大げさに誇張されたものである」「女性にとって乳癌のリスクを上げる要因となるのは、HTを使用するよりも、高齢出産・肥満・飲酒・脂質の多い食事を多く摂ることの方である」とも述べている(下記記事を参照)。
 
img-kai6-1これらのポジティブなメディア報道が、日本でもよりスポットライトを浴びることで、一般女性はもとより、医療従事者や社会における正しい理解が進むのではないだろうか、と筆者は期待する。



海外視察訪問

さて、上記でご紹介した調査で分かるように、ヨーロッパの現場、特に北欧において、更年期とQOLの関係性が強く認識されており、またHTのベネフィットはリスクを上回るとして、高い解答率を挙げている。このことから、次の視察先として、北欧を訪問することを決めた。
報告書vol.1でも分かるように、北欧はHTの歴史が世界でも長く、またHTの普及率が高いことでも知られている。
そこで、夏前から北欧視察調査のため、各準備や関連団体へのコンタクトを開始した。しかし、実際には北欧諸国は冬が長く夏が短いために、現地では7~8月を夏休みにあて、丸々一ヶ月休暇を取っているケースがほとんどである。そのため、何度も連絡を重ねるも、訪問先とのコンタクト及び旅程の決定がはかどらず、このたびの北欧の準備にはかなりの労力や時間、体力を要した。すべての訪問先と連絡が取れ、スケジュールが最終的に確定したのは、なんと出発予定日の2日前であった。
次号で北欧調査について述べたい。

 


参考文献

1. M. H. Birkhäuser, I. Reinecke Current trends in hormone replacement therapy: perceptions and usage.Climacteric 2008;11:192-200
2. http://www.timesonline.co.uk/tol/life_and_style/health/article1021241.ece
3. http://www.dailymail.co.uk/health/article-1020532/First-wonder-drug-danger-health-HRT-given-ALL-CLEAR.html