海外更年期状況調査報告-10. 更年期とHTの海外報道(2008年12月)

海外における更年期やHTの報道

前号において、フィンランドのマスメディアでは、雑誌・テレビ番組のトークショー等において、更年期に関連するトピックが日常的に見られる、と報告した。
Vol6「海外のHTコンセンサス」号においても、海外メディアでは、HTについてのポジティブな報道が目立つ事例をご紹介したが、今号では、海外での更年期への女性の意識等とも併せて検討したい。
 
かつてニュースウィーク誌では、「20年後には4000万人の女性が更年期(実際にはBig Mという表記)を迎えるが、今では女性たちは黙って更年期を迎えるのではなく、そのことについて話し合い、何が必要か、何をすべきかといった答えを必要としている」の記事が掲載された(1)。
 
ニュースウィーク誌の内容は、下記の内容であったことをご紹介したい。
「かつて更年期について女性たちは、家族や医師、友人とも話し合われることがなく「個人的な出来事」であった。自分の体に何が起きているかを知りたくても、年齢のことを言われたり、性的なことにも関係するので、質問をすることを恐れていた(1)。しかし、現在ではそういった状況は変わり、更年期に関する書籍が売れたり、テレビショーで更年期がトピックとなったり、またサポートグループができ、更年期女性の集まりやミーティングが開催されるようになってきた(1)。この理由として、米国の女性は2020年までには約4000万人の女性が更年期を迎えることになり、また6000万人が更年期を終えているか、あるいはその最中であることが予想され、以前よりも平均寿命が延長したことと関係しているからである(1)。
 
現在更年期を迎えている女性、あるいはこれから迎える女性も、以前よりも自分の要望や聞きたいことをはっきりと述べるようになり、ある本においては「米国の企業の重役室は、この世代の女性で多く占められるだろう」としている(1)。また更年期の治療法について、専門家の中には「ホルモン療法は更年期の様々な症状を和らげ、心疾患や骨粗しょう症など、更年期以降に生じる長期に渡る健康問題を防いでくれるため、「不老不死の薬」と捉えているケースもある」(1)
 
また働く更年期女性は、症状が出た場合、職場でどのように対応したらよいのだろうか?Ms. Magazineという米国の女性向け雑誌のロビン・モーガン編集長(51歳)は、「風邪をひいてくしゃみが出ても恥ずかしいと思わないでしょう。それと同じように、男性の同僚と同席する会議の際に突然顔にホットフラッシュが出ても、更年期であることを話すのに違和感はありません。自分のかばんを開けて扇子を出し、軽々と扇いで「ちょうど今ホットフラッシュが出たのよ」というのです」(1)
またある企業で人事部のマネージャーをしているナディーン・ハーグ氏(48歳)は、「女性たちが更年期と上手く付き合い、いかなるプレッシャーや業務にも対応して行けるということを男性のマネージャーに主張していけば、男性は女性たちが自分の感情をコントロールできないとは思わないでしょう。また男性たちは、この世代の女性と一緒に仕事をしていくために何をしたらよいか、と自分で考えるようになるでしょう。」またシアトルの心理療法士は、「もし企業の重役室がこの世代の女性で多く占められるようになれば、男性の重役たちはそれを受け入れるようになるでしょう。」(1)
 
img-kai10-photo1一方、HTに関するマスメディアの報道についても紹介したい。
2008年8月に出されたイギリスの「Mail online health」の記事では、タイトルを「閉経後でもHTの服用は、女性の不眠症や関節痛、性生活を改善する」としている(2)。つまり、専門家曰く、「更年期を迎える多くの女性にとって、HTの使用は安全である。またHTのリスクのみが大いに誇張され、取り上げられている傾向がある。実際に女性たちはHTを使用することで、健康面での改善を多々楽しんでいる」「寝汗やホットフラッシュに悩む女性の約4分の3が、HT使用の1年後に症状が消えた」とし、「British Medical Journalにて掲載された報告によると、HTを使用した場合、すでに閉経を迎えて、ホットフラッシュがなかった女性においても、不眠、性生活、関節痛において顕著な改善が見られた」と報告されている(2)。
 
またHTガイドラインについても触れており、「再検討する必要がある」としている(2)。つまり、「国際閉経学会の報告によると、現在のガイドラインが、更年期をこれから迎える女性の使用期限を約5年としていることに捕らわれすぎないように、医師はより個人レベルで女性を診ることの重要性を強化している」ということである。また、HTのリスクについてもきわめて誇張されて取り上げられてきている、とも述べている(2)。
 
更に、「研究の結果によると、HTによって心疾患のリスクが上がることはなく、多くの女性にとって、HTを使用するよりも、高齢出産、肥満、飲酒、脂質の多い食事の摂取のほうがが乳癌のリスクを高めている」、乳癌への影響は「ごくわずか」であると述べている(3)。
国際閉経学会次期会長のDr. David Sturdeeは、「医師は、何かのしばりや制限を受けることなくHTを処方すべきであり、「5年の使用期間」は撤廃されるべきだ」と述べている。更に、「女性は自分達のquality of lifeを維持するために必要な限り、HTを使うべきだ」、「HTは更年期の症状を和らげ、女性のQOLを高めるのに最も効果的であるが、リスクについての報道が女性たちの誤解が不安と混乱を招いたため、今後もベネフィットとリスクについて十分に説明していく必要がある(3)」という内容である。
 
またロイターによれば2008年8月21日に「HTは女性の生活の質を高めている」とのタイトルで記事が出されている(4)。また多くの専門家は、「更年期の症状をコントロールしていくには、まずは低用量のHTを使用して、自分の症状と合わせて様子を見るのが最も効果的である」としている(4)。
 
以上のように、海外における報道は、おしなべてHTのリスクについて触れながらも、全体としてポジティブな印象を与える内容となっている。これらの報道は非常に頻繁に発信されており、一般女性に与える影響も大きいと考えられる。
一方、日本国内ではどのような状況だろうか。更年期については、昨今は女性誌等においてもしばしば特集が組まれるようになってきており(5)、更年期についての理解が進んできていると思われる。しかし全体として、ガイドラインの使用期限についての報道などに着目した内容が多く、まだリスクについての報道が先行している印象を受ける。今後、国内でも最新の適切な情報の発信が望まれる。

 



参考文献

1.http://www.newsweek.com/id/125851Menopause
2.http://www.dailymail.co.uk/health/article-1047914/Now-experts-say-HRT-IMPROVES-quality-life-despite-health-risks.html
3.http://www.dailymail.co.uk/health/article-567382/Now-experts-claim-HRT-safe–despite-years-health-warnings.html
4.http://www.reuters.com/article/latestCrisis/idUSN21457462
5.クロワッサン第33巻第7号、マガジンハウス社