HRT(ホルモン補充療法)

更年期症状や更年期障害の治療のために、閉経前後に体内で不足してきた女性ホルモン(エストロゲン)を補充する療法です。

更年期 障害・症状の根本治療であり、欧米や北欧を中心に世界の先進国で更年期世代からの女性に処方されています。また、もともと女性に体内にある女性ホルモンを使った治療法として、各国に長期データがあり、安全性と有効性が示されています。

現在、日本では、飲み薬、貼り薬(貼付剤)、塗り薬(ジェル)が医師の処方する薬として、健康保険が適用されています。

 

<HRTに期待される効果>

  • ホットフラッシュ(のぼせ、ほてり、多汗)、寝汗、睡眠障害、関節痛などを和らげる
  • 抑うつ気分、または抑うつ症状を改善する。
  • 骨を破壊する細胞(破骨細胞)の生成を抑えて骨密度を増加させる。

このため、骨粗しょう症を予防するだけでなく、すでに骨量が減少した女性に対しても   高い骨折予防効果を持つ。

  • 皮膚のコラーゲンやエラスチンを増やし、肌の張りや潤い、柔軟性を保つ。
  • 膣粘膜の乾燥を防ぎ、性交痛を改善する。
  • 抗酸化作用がある。
  • 血管壁を柔軟にして、心臓血管系疾患のリスクを下げる。
  • 糖・脂質代謝によい影響を与える。
  • 過活動膀胱の症状を和らげる。
  • 認知症リスクを抑える可能性がある。
  • 顎骨(あごの骨)の骨密度を増加させる。
  • ひざやひじ、指の関節などの軟骨の代謝にもよい影響を与える。
  • 大腸がんのリスクを下げる。

(参考:「ホルモン補充療法ガイドライン」編集/監修 日本産科婦人科学会・日本女性医学学会)

 

<HRTで処方される製剤>2014年12月現在の保険適応製剤

基本的には、「エストロゲン」と「黄体ホルモン」という2種類の女性ホルモンを使用します。このうち黄体ホルモンは、月経のように出血を起こし子宮内膜の増殖を防ぐことが目的です。

そこで、手術で子宮を摘出した人や2~3ヶ月の短期間のお試しHRTでは、黄体ホルモンを使う必要はありません。エストロゲン単独療法が行われます。

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<HRTの使い方>

子宮のある人とない人、閉経後まもない人と何年もたつ人など、その人の状態によってHRTの使い方は変わります。

自分のからだにふさわしい使い方を知って、更年期からのQOLを高めることに役立てましょう。

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<HRTができない人>

HRTを行ってはいけないのは、乳がん、子宮がん、血栓症の治療薬を処方されている人、または脳卒中や心筋梗塞を起こしたことのある人などです。

なお、子宮筋腫、高血圧、肝機能障害がある場合には、投与方法や投与量を工夫しながら行われています。

 

<他の薬との併用について>

漢方薬、精神科薬、風邪薬、頭痛薬、抗アレルギー剤、コレステロール低下剤、降圧剤、便秘薬など一般的な薬とHRTを併用することができます。甲状腺疾患、糖尿病の各治療薬についても、HRTを併用して問題はないとされています。

 

<HRTのマイナートラブル>

特に使い始めの1~2ヶ月では、胃のむかむか、胸の張り、おなかの張り、おりものの増加などの違和感を感じることがあります。

また、HRTでエストロゲンと黄体ホルモンの併用すると、月経のような出血があります。

これは、エストロゲンのみを長期間投与すると、子宮内膜が増殖してがんにつながる恐れがあるため、黄体ホルモンを併用して月経のような出血を起こして子宮内膜をきれいにしているのです。

こうした違和感に対し、HRTでは、製剤を半分に切ったり(割ったり)、2日に1度使用するものを3日に1度にしたりして使用するホルモン量を調整していくことができます。

医師に相談しながら「体に感じるメリットがより大きく、違和感が少ない」という状態を見つけていきましょう。

 

<HRTと乳がんリスク>

HRTと乳がんの発症リスクについては、5年以内の使用ではまったく見られず、7年以内でも明らかなリスクはないという解析結果が出ています。特にERT(エストロゲン単独投与によるホルモン補充療法)では、乳がんの発症は減るという報告も増えています。

 

<詳細>米国立衛生研究所(NIH)が2002年に発表したWHI中間報告の当初の解析では、HRTを5年以上投与した場合、乳がんのリスクが1.26倍になる(日本女性にあてはめると、1年間で1万人につき3人ぐらい乳がんが増える)といわれてきました。

このことは、当時の日本の新聞各紙でも大きく取り上げられ、一部で「HRTを行うと乳がんになる」という行き過ぎた解釈が生まれたのです。

 

現在、国際閉経学会など国際的な専門機関の一致した見解は、次のようになっています。

閉経後早期から行うHRTはリスクよりも利益/利点が上回っている。また、「何年間までなら投与してよい」というように、期限をつける理由は見当たらない。

 

 

<HRTと脳卒中や心筋梗塞のリスク>

閉経後早期(おおむね2年以内)に行われるHRTでは、心筋梗塞は増加していません。また、閉経後2年より遅く開始したHRTでは、内服薬で静脈血栓塞栓症や脳梗塞がごくまれに発生するが、皮膚から吸収するエストロゲン製剤(貼り薬など)では増加しないという研究報告が多く出ています。

 

→OC(低用量ピル)からHRTへ

OCとHRTは、どちらもエストロゲンとプロゲステロンという女性ホルモンを使った製剤ですが、OCのほうがHRTよりも5倍ほど多いエストロゲンを含んでいます。

そこで、それまでOCを使ってきた人も、50歳を過ぎ閉経後には、ホルモン量が過剰になる可能性があります。

医師に相談しながら、徐々にHRTに移行していくことを考えましょう。