
※この記事は「女性の健康力」プレスセミナー(2月28日・NPO更年期と加齢のヘルスケア主催)における天野恵子先生の講演を参考に当会がまとめました)
では、血中のコレステロールや中性脂肪などの数値が高いとなぜいけないのでしょうか。
それは、動脈硬化を引き起こしやすくなるからです。
脂質の高い状態が続くと、動脈の内壁にコレステロールが沈着しやすくなります。
このため動脈の弾力性が失われて硬くなり、コレステロールが沈着することで細くなるために、血液が通りにくくなります。
これが、「動脈硬化」です。
動脈硬化がなぜ怖いかは、よく知られているとおり、血管が詰まって血液が流れなくなり、臓器や細胞の壊死、血管破裂を招く「心筋梗塞」が起こりやすくなるからです。
脂質異常症は、虚血性心疾患(心筋梗塞、狭心症、大動脈瘤、脳梗塞など)という命に関わる病気の入り口ということができるでしょう。
さて、上記で述べたのは、男性を中心とした病態です。
女性の脂質異常症は、女性ホルモンのエストロゲンと密接な関係にあることがわかっています。特に、閉経する前の、若年〜50歳までの女性の体はエストロゲンに守られているために、脂質異常を放置しても動脈硬化などの悪い状態にはすすまないということが言われています。これは、エストロゲンが、血中コレステロールの悪玉化を防いでくれることによります。
日本動脈硬化学会発行の「動脈硬化疾患予防ガイドライン2007年版」では、女性の治療目標について
「閉経前の脂質異常症は、非薬物療法が中心となり、閉経後は危険因子を勘案し薬物療法を考慮する」
としています。
つまり、「閉経前、まだ月経がある女性は、コレステロール値が高くてもコレステロール低下薬などの薬を飲む必要がない」ということがガイドラインには記されているのです。
では、閉経後女性の治療に関係する「危険因子」とはどのようなものでしょうか。
天野恵子医師(千葉県衛生研究所所長・千葉県立東金病院副院長)はその講演の中で「NIPPON DATA 80」の報告をとりあげ
「虚血性心疾患死亡に関するリスクについて、男性では年齢、血圧、糖尿病、高脂血症、喫煙がリスクと認められたのに対し、女性では年齢、糖尿病、喫煙がリスクと認められた」
と述べています。
つまり、女性の高血圧と高脂血症は、それだけでは虚血性心疾患をもたらす動脈硬化につながるとはいえないということなのです。
「女性の高脂血症は、糖尿病、喫煙という危険因子と重なった場合のみ、投薬治療が必要となるということです」(天野恵子先生)
現実にはどうでしょう。閉経前でも閉経後でも、コレステロール値や中性脂肪値が高いと、それを低下させる薬が女性にも男性を同じように処方されているようです。
天野先生は
「日本では、年間販売額で3000億円を超えるコレステロール低下薬が処方され、その7割が女性に使われています。単にコレステロールが高いというだけの健康な女性にも盛んに薬物療法が行われているが、行き過ぎの医療と言わざるを得ないのでは」
と言います。
もちろん、その薬価の3割は家計が負担しています。女性自身も必要のない薬はできるだけ飲みたくありません。体のためにもお財布のためにも。
「閉経前にコレステロール値や中性脂肪値には何の問題もなかったのに、閉経したら数値が上がってしまった」
このような方も多いことでしょう。
この場合は、エストロゲン減少によってこの症状が起こっていると考えるのが自然です。そこでHRT(ホルモン補充療法)を行い、数値が下がればそのまま続ける。もし下がらなければ検査の上、他の原因を探る、ということが考えられるでしょう。
詳しくは更年期医療に詳しい医療機関をおたずねください。
★千葉県立東金病院→http://www.pref-hosp.togane.chiba.jp/
★「NIPPON DATA80」についてはこちらをご参照ください→http://www.epi-c.jp/e007_1_0001.html