| 米国のHRT大規模臨床試験の中間結果と中止報告を読む前に |
| ◆試験結果を見るにあたって注意したいこと
今回の臨床試験では、対象者の健康管理などにいくつかの問題点が指摘されています。これは臨床試験を行った米国NIH自身も認めていることです。 また、今回はいくつもの臨床試験のうちの一つがたまたま中止になっただけで、HRTは米国においてこれまで通り普通に処方されています。 ◆試験対象者の多くが肥満していました この臨床試験に参加した女性たちの平均BMI(体格指数)は28.5です。これは、たとえば身長が157cm の時、体重70.2kgとなる数値であり、第一度肥満にあたります。 日本の女性の一般的な健康への認識から見ても、「正常な健康体の女性が対象となった臨床試験である」とは言いがたいでしょう。 乳がんと心臓疾患の重要な危険因子は肥満です。つまり、もともと臨床試験の対象者の中に乳がんや心臓疾患、心臓発作の危険因子を持った人が多かったとも考えられるのです。 ◆喫煙習慣など、対象者の健康管理の状態はあまりよくありません このほか、 ・対象者の約半分が過去、または今もタバコを吸っている ・35%の人が高血圧症 ・19%の人が血栓予防のためにアスピリンを服用している などの問題点もあります。 この臨床試験の対象者は一定年齢の女性たちの中からまったく無作為に選ばれているために、その健康管理の状態はあまりよいものとはいえません。 ◆わが国の女性で、長期のHRTのリスクがメリットを上まわるかどうかは、この試験結果からははっきりしません 以前から、HRTを長い期間続けることで乳がんの発生率が増えるという報告は行われています。今回の試験結果に見られる乳がんのリスク増加も、それを追認したに過ぎません。また、逆に長期間のHRTで骨折が減るというプラスの結果についても評価を知りたいところです。 ◆HRTでよい結果を出すには、自分自身の健康管理が重要です 日本人はもともと、欧米人に比べて肥満度は低く、乳がんや血栓症などの発症率も1/3以下となっています。このように疾病構造も生活習慣も違う状態で行われた試験だけに、その結果が日本の女性にそのままあてはまるかどうか疑問なところです。 むしろ今回の結果から読めることの一つは、HRTでよい結果を得るためには、太りすぎや喫煙習慣などを改め、私たち自身が健康管理をきちんと行うことが大事だということでしょう。 「先生が(他の人が)いいと言ったから、よく説明も受けずにHRTをやっている」「心配な報道があったのでやめた」というのではなく、HRTへのきちんとした理解を持ってその付き合い方を考えて行きましょう。そして、自分の健康状態と療法との相性を知っておくことも大切です。 ◆国内でも追跡調査がスタートします わが国でも、文部科学省のがん研究班は、国内における初のHRTの使用実態と乳がんや子宮がんとの発病率の関係を解明する追跡調査を9月中にもスタートさせることになりました。これまで国内ではHRTの使用実績が少なく、医師や保健機関などによる調査もまったく行われていなかったのが実状です。 今後、日本人の生活習慣や疾病の傾向、メンタリティにあったHRTの追跡調査が行われることで、女性の健康に役立つ情報がより早く、より多く提供されることを期待したいと思います。 VOL.11(臨時増刊号)SEPTEMBER 2002 【監修】小山嵩夫クリニック院長
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