骨粗鬆症とは(更年期の骨の健康と女性ホルモン)


 元気な屋台骨を一生守るために 

かつては「高齢者の病気」ととらえられがちだった骨粗しょう症
しかし最近は、骨の健康は女性ホルモン(エストロゲン)と密接な関係にあることがより明解となり、「骨粗しょう症は女性の病気」という認識が広まってきました。
直接目に見えない、症状に表れないからこそ、「私の骨は大丈夫?」と誰もが心配に思うもの。
一生健康な骨で元気に生活するためには、心配をそのままにせず、積極的に検査を受けたり予防をしたり、ライフスタイルを改善していきたいですね。
そのポイントを、「」と「女性ホルモン」の両方に詳しい東京女子医科大学産婦人科の太田博明先生に伺いました。
(「骨粗しょう症Q&A」もあわせてお読みください)

骨粗しょう症の骨写真



更年期から背骨の骨折が始まることも

女性の病気というと子宮がんや乳がんを思い浮かべる方も多いでしょう。
しかし、骨粗しょう症もあなどることはできません。スウェーデンでは閉経後女性の死因の5番目、アメリカでは7番目、そして日本では8番目となっているのが骨粗しょう症です。
その症状の一つとして寝たきりの原因になるとよく言われるのが大腿骨頸部骨折ですが、各年代で一番多い骨折は背骨です。

年をとって背中が曲がってくるのは、姿勢が悪くなったのではありません。
骨粗しょう症により、体の屋台骨ともいえる背骨が圧迫骨折を起こしているのです。
ある調査では、平均57歳で1000人中38人がその大切な背骨を骨折しているというデータもあります。
57歳はまだまったく若いのに、4%もの人に骨粗しょう症による骨折が現われているのです。


エストロゲン低下は関節にも影響する

大腿骨や背骨だけでなく、ひざや手足の関節にも、変形性の関節症が起こりやすくなります。女性のお年寄りにO脚が増えるのは、ひざの軟骨が磨り減って体重が支えられなくなるという“退行性機能障害”です。
たとえ外見上の変化がなくても、「ヒールがはけなくなった」という悩みを訴える方もいます。
指の関節症では50代で「指輪がはめられなくなった」という女性も増えてきます。
検査をしても、リウマチでも膠原病でもないという時、これらは、エストロゲンの低下による軟骨代謝異常で関節破壊が起こっている場合があります。
骨折は骨粗しょう症の骨代謝異常によるものであり、関節痛は軟骨が破壊されることにより起こります。
女性ホルモンが減ることにより、骨だけではなく関節もダメージを受けます。

女性としての楽しみをいつまでも

こうした生活の不便については、これまでは医師もあまり注目して来ませんでした。しかし、何歳になっても、いざという時はきちんとおしゃれな装いができることは大切なことです。女性性が失われるということは、人生の楽しみの大きな部分が減ることにもなり、自信を失ってうつ症状にもつながることがあるのです。
内臓に与える影響としては、横隔膜が上がって逆流性の食道炎になりやすくなります。こうなると、食べる楽しみも減ってしまいます。


女性ホルモンが全身を守っていた

また、女性は更年期を過ぎると、がんよりも心臓血管系の病気(脳卒中や心筋梗塞)で亡くなる率が高くなります。男性の死因がどの年代もがんが一番多いのに比べると、大きな違いです。
なぜかといえば、更年期まではエストロゲンが、脳、心臓、骨、腸、乳房、血管、歯、目などいろいろな部分に受容体を持ち、女性の身体に大きな役割を果たしてきたからです。
守ってくれていた女性ホルモンがなくなってしまったために、心臓血管系にもトラブルがおきやすくなるのです。
僕と同世代の、閉経後女性の女性ホルモン数値(E2)をはかってみると、僕のほうが3倍も高い数値を示します。50代後半男性のE2は30ピコ(pg/mL)ぐらいなのに対し、女性は10ピコぐらいまで下がってしまうのです。


せめて、男性並みの女性ホルモンは確保したい

「老いを自然に受け入れる」という考え方もありますが、閉経後30〜40年も生きる体を守るためには、男性並みの30ピコぐらいは確保したほうがいいでしょう。
そういう意味でも、HRTによってある一定量の女性ホルモンを補うことは、閉経後の女性にとって必要なことだと考えられます。
現在、世界のHRT市場には、錠剤・パッチ・ジェルの3つの剤型のものが出回っており、日本でも今後ジェル状の塗るHRTが認可される見通しです。
同じ薬剤であっても、使い方や薬の量の違う何種類かが出ることで、症状やライフスタイルにあわせて選びやすくなるでしょう。
女性ホルモン補充を含む更年期医療は、特に「自分の状態に合わせて選べる」つまり「テーラーメイド医療」であることがとても大切だといえます。


せめて、男性並みの女性ホルモンは確保したい

女性ホルモンがさまざまな疾患にかかわっています。更年期の諸症状は、まさに更年期医療のスターティングポイントといってもいいでしょう。
ちょっと体調が変だなと思ったら「年だから」と我慢せず、「体が警鐘を鳴らしてくれている」と考えて受診してください。それはまさに、男性にはない「よい知らせ」なのです。
そして、その警鐘が目指すものは、骨粗しょう症を含む生活習慣病の阻止にあります。
今後、日本の医療は50代からの骨粗しょう症対策をはじめ、もっと更年期世代の女性への健康支援に力を入れていく必要があるでしょう。
というのは、我々医療従事者にとっても、女性に健康教育をすることはとても効率的なのです。
なぜなら、男性にいくら説明しても本人が納得するだけで周囲になかなか伝わりません。ところが女性に運動や食事、ライフスタイルの改善についてきちんと説明しておけば、その健康習慣は夫や子どもにも、孫の代にも伝わっていくのです。
一人の女性の問題ではなく、家族をまきこみ、社会を巻き込んで健康対策ができ上がっていきます。更年期医療はまさに総合医療だといえます

 

太田博明(おおたひろあき)・東京女子医科大学産婦人科学教室主任教授

1970年慶應義塾大学医学部卒業。ご専門はウィメンズヘルス、婦人科腫瘍学、更年期医学。婦人科腫瘍専門医。細胞診指導医。東洋医学会専門医。
日本更年期医学会・日本骨粗鬆症学会などに長く携わられ、いわば「骨」と「女性ホルモン」の橋渡しをしてこられた専門医です。更年期世代の女性が考えるべき骨の健康、生活習慣病の阻止について、ライフスタイルの見直し、心と体の状態チェックの重要性を以前から強く訴えられ、2002年のメノポーズフォーラムでもご講演いただいています。最近では若年女性の骨密度を高くするにはどのような栄養摂取をすればよいのか、またどのような運動をすればよいかなどの研究もされています。

東京女子医科大学病院(産婦人科)
〒162-8666 東京都新宿区河田町8-1
※東京女子医科大学は全科とも予約診療となっています。
(予約専用電話)03-3353-8138
・平 日 9:00〜16:00
・土曜日 9:00〜12:00
※現在、太田先生の外来(火・木)は子宮腫瘍、卵巣腫瘍の診断と治療を中心に行なわれています。骨粗しょう症の診断・治療については電話予約時にお問い合わせください。



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