クリニック訪問10 石川県 金沢大学医学部付属病院


更年期って何???Q&A VTR
女性ホルモンの働きや、HRTとがんとの関係など、小池先生がトークとアニメーション映像で分かりやすく説明してくれます。
「文章を読むだけではわかりにくい」という人にもおすすめ。

 → Dr.小池の更年期からの輝き

10代前半から50歳前後まで、女性が35年以上もほぼ毎月つきあう「生理(月経)」というもの。あまりに身近すぎて、その意味を考えることはあまりないかもしれません。「閉経という語感はさみしいけど、生理がなくなるのは楽でいいわ」という声もよく聞きます。
しかし、金沢大学医学部産婦人科助教授の小池先生は「本来は、生きている限り生理があったほうがいいのでは」と言います。生物学的な見地を踏まえ、女性ホルモンと生理の重要性について“目からウロコ”のお話を伺いました


多くの生物は更年期前に一生を終える?
生き物には世代交代というものがあるのですね
ええ、それには2つの意味があるんです。一つは、生物学的に言うと、生き物の体は、繁殖好きの遺伝子が運転する乗り物といえます。ですから、できるだけいい受精卵を作って次の世代の繁殖につなげたい。年齢が行くと受精卵の質が下がり、受精能力も落ちてきますので、「乗り物」としてもっと若い次の世代に乗り換えたい、となります。そのほうが次の世代を強くして、種を繁栄させていくのに便利と考えられるわけです。もう一つは、世代交代を早めることで、生殖のチャンスをたくさん作り、進化を促進するということもあるんです。

きなり衝撃的な話ですが、そのために人間以外の生き物は出産できる時期をすぎたら寿命を迎えることになっているのですね たとえばサケが川をさかのぼって産卵し死んで行くという話はよく知られていますが、他の動植物でもほとんど同じようなことが起こります。更年期の前と後の違いというのは、子どもを作る年齢、つまり生殖期かそうでないかということですから、自然界には生殖期を過ぎて生きている長寿の生き物はまれということになります。

大昔の女性は生きている間はずっと生理があるのが普通だった!
人間はいつ頃から長寿になってきたのですか 閉経とは、卵巣が機能しなくなって排卵が止まるということですが、その時期は統計的な数字のある明治初期からほとんど変わらず、平均50歳です。一方で、ご存知のように人間自身の寿命はどんどん延びてきています。(右図)

平成16年の統計では、男の平均寿命は78.64年、女の平均寿命は85.59年でした 人類は自然に挑戦し、がんや感染症、衛生状態、栄養状態などを克服してきたために寿命が延びてきたんですね。こうした科学や文化の力がなければ、そもそも自然が霊長類に与えた自然の寿命は40歳ぐらいではないかと考えられます。

閉経は50歳ですから、昔はほとんどの女性は閉経する前に寿命を迎えたのですか? そうですね。自然に与えられた平均寿命の40歳をこえて、長生きする女性も当然いるわけで、その人たちのために、自然は卵巣の寿命としては、さらに10年分、余分に授けたとも、考えられます。そのような時代には、多くの女性は生きている間はずっと卵巣からでる女性ホルモンにより、生理があるのが当然だったんですよ。

更年期をすぎて、クオリティの高い人生を生きるには
なるほど。閉経を超えて生きることが当然のような気がしていましたが、そうではないのですね 先人たちがいろいろ研究し自然に挑戦してきてくれたおかげで、我々は生きながらえているといってもいいでしょう。感謝しなくちゃいけない。本来はなかった命が今ここにあるという恩恵を受けているのだというふうに考えていただければ、もっと人生を大事にしたくなりますよね。
そこで大切なのは、ただ生きているだけではなく、元気ではつらつとした身体を持っているか、ということではありませんか?

閉経後はホットフラッシュやめまいなどの更年期症状が出る人も多いし、腰痛やひざの痛み、疲れやすいなどの不調を感じやすくなります それは、年齢のせいではなく、女性ホルモンがないからなんです。それまではずっと卵巣が働いて女性ホルモンをつくり、生理のある人生だったのに、寿命が延びた分については、生理も女性ホルモンがない人生になってしまいます。
そこで、足りなくなった分の女性ホルモンを補充しましょうという療法(HRT)が必要とされてきます。自然が、つまり卵巣が行っているホルモンの補充療法は、生理を起こす方法です。ですから、
私は自然に近い、「生理を起こすタイプのHRTをしましょう」と提案しています。

生理の思いがけない効用
不調の改善にHRTをしたいけど、生理のような出血があるのがわずらわしいという声はあります 私の診察室でも、患者さんに「生理があるHRTをしましょう」というと、みんな「え〜っ」といいますよ。でも、人類の生物学的歴史では、生きているということは生理があるということです。
食事をしたり排泄をしたりするように、妊娠中以外は月に一度生理があるのが自然なことですから、HRTも自然のやり方と同じようにしたほうが体にいいと考えています。

卵巣が女性ホルモンを作っていたと同じように、外から女性ホルモンを補充するということですね そうです。投与のしかたとしては
 ・生理を起こす方法(周期的投与法)
 ・肝臓を通らない方法(貼付剤)
が、現時点ではこれが一番自然のやり方に近いと思われます。
また、最近言われているのが、「生理によって、体内の不要な鉄分が排出される」と言うことです。体内の鉄分が酸化することにより、がんや動脈硬化の原因となる活性酸素を発生させることは知られていますが、生理によって女性は体内の鉄分を捨てることができるというわけです。つまり毎月の生理は老化を予防しているともいえます。

また、血液中には抗体や白血球も入っています。それが毎月子宮から流れ出てくるということにより、膣や子宮に細菌が入り込まないように、毎月防御しているんです。体内の衛生状態を守り、子作りの舞台裏を作っているのは生理なんです。

人体の神秘ともいえる生理の役割ですね。HRTを行なうということは、その生理を持続させることにもなるわけですね よく閉経後の女性に行うHRTは自然に逆らってませんか?と言われますが、逆に失った女性ホルモンを補充し、女性の体にとっては、本来あるべきもっとも自然なホルモン環境に近いものにするんです。


聞けば納得。でも、日頃の生活の中ではなかなか気づかないユニークなテーマでお話いただきました。長寿の時代を生きる現代の私たち女性にとって、閉経後の人生で起こることは、前の世代の女性たちが経験しえなかったことばかりかもしれません。中でも、女性ホルモンと生理の持つ役割には注目していきたいもの。そして、後の世代の女性たちにもその大切さを伝えていきたいものですね。
(取材:メノポーズを考える会


  
小池浩司(こいけこうじ)先生
金沢大学大学院医学系研究科産婦人科学 助教授
昭和57年大阪大学大学院医学系研究科修了
米国バージニア大学研究員。ホルモンの作用機序に関する研究に従事され、市立堺病院産婦人科医長、大阪大学医学部助手等を経て、平成9年より金沢大学医学部・講師。平成10年より現職。
思春期医学、不妊症、更年期医学の分野でご活躍中です。国際閉経学会、米国内分泌学会、日本更年期医学会ほか所属多数。著書『更年期からの輝き』(前田書店)

金沢大学医学部付属病院産婦人科 
http://web.hosp.kanazawa-u.ac.jp/
〒920-8641 金沢市宝町13-1 TEL:076-265-2000(婦人科内線3080)
小池先生の診察は火曜午前(初診)金曜午前に行なわれています。

※毎週木曜日(午前中)は、杉浦クリニックにて更年期外来を行なっています。  
杉浦クリニック 石川県金沢市光が丘3-268   076-298-1300



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