クリニック訪問9 東京日本橋 安江レディースクリニック


日本橋人形町といえば、老舗の和菓子店や蕎麦屋が軒を連ねる下町商店街と、それを取り囲むようにIT企業などのオフィスビルが林立する街。
そんなビルの中に安江レディースクリニックがあります。
不妊治療から更年期医療まで、仕事帰りに寄っていろいろ相談できる婦人科クリニックとして人気を得ています。


 知っているようでわからない、自分の「更年期」
更年期の患者さんはどれぐらいの割合ですか 開院した15年前は20〜30代の患者さんが7割以上でしたが、2005年の割合では40〜50代の中高年の方が4割以上です。更年期世代の方の健康への関心が高まっていることを感じますね。

どのような症状が多いと感じますか やはりホットフラッシュを中心とした運動血管神経系の症状。それと実際に患者さんに接していて意外に多いなと思うのは指、股関節、ひざなどの関節痛です。

「更年期の症状ではないか」ということで受診されるのですか その認識は人それぞれで、「まさか更年期なんて」と思っている方もけっこういます。特に、40代後半でまだ完全に閉経せず、生理が不規則にある状態でめまいなどが起こっている方など、なかなか更年期の症状とは思わないですね。神経内科や脳外科、耳鼻科、いろいろ通っても原因が分からず、婦人科においでになってホルモン検査をし、HRTを処方してやっとすっきりするということもあります。

レビや雑誌でも更年期の情報はたくさん出ていますが、自分のこととなると逆にわかりにくいのですが それは症状がいろいろだから。「頭の後ろが重い」、「頭にもやがかかったみたい」という方もいますね。「背骨に鉄骨が入っている感じ」と表現された方もいましたが、実際にどういう形で出るか分からないので、自分ではなかなか思い当たらないんですよ。

 40代後半。閉経への移行期のホルモンチェックは難しい
一般的に、更年期を知るためのホルモン検査といえばエストロゲン(E2)と卵胞刺激ホルモン(FSH)を調べますが、40代後半で徐々に生理のサイクルが乱れてきている状態では、排卵も不定期です。生理はあっても排卵していないことも多いのですが、たまに本当に排卵していることもありますから、E2をいつ測ったらいいかは難しいですね。卵巣機能の予備能をみるためには生理中にFSHを測るのがよいでしょう。一方、無月経の状態ではFSHはおそらく高い状態にあると思いますので、そうなるといつ測ってもよいことになります。

 閉経直後のケアが大切
HRTの処方について教えてください ホットフラッシュなど、閉経前後にどっと襲ってくる症状にはやはりHRTが一番よく効きます。中には、閉経後10年ぐらいたって60歳ぐらいで更年期の症状を強く感じる方もいるんです。その場合はHRTの中でも作用のマイルドなエストリオール製剤というのを使うことがあります。

どの程度症状があったらHRTを受けるか、受診のきっかけがつかめない方も多いようですが たとえば骨量は、閉経直後に急激に減る傾向があります。だから骨粗鬆症を予防するという観点からは、特に閉経直後に開始するというのが重要です。私自身は閉経直後にHRTを始めるというのはとてもいいと思うのですが、やはり「我慢できなくなったらHRTを受けます。」という人が多いようですね。

受診してもなかなかそうしたアドバイスが得られないという声もあります 20年ほど前にアメリカで婦人科医療に接する機会があったのですが、当時のアメリカでは、学会の演題や医学生の教科書とか、患者のベットサイド教育でもHRTについての内容がすごく多かったんですね。あるドクターによると「HRTのベネフィット(利益)をきちんと患者さんに提示しなければ、後で知らされなかったということで訴えられてしまうことがある。」という位でした。
当時の日本では「HRT」「ホルモン補充療法」なんて聞いたこともない時期のことですから、大変驚きましたね。
それだけHRTが更年期〜老年期の女性にとって重要な役割を果たしているということですから、私達もHRTについてもっと正しく説明できなくてはと思いますね。

閉経直後のHRTは脳にもよい影響があるという説がありますが アルツハイマーを予防するという話もありましたね。ただ、HRTについては、2002年のWHI報告を始めいろんな調査報告があり、さまざまな議論が起こっています。これから日本人のデーターが集積されて、もっと新しいことが分かってくると思いますが、常に慎重に正しく効果や副作用を見極めていく必要があると思います。

 サプリメントの効果や安全性も確認して 
でも、きちんと説明し、胸の張りなどについてもちゃんとフォローしながら始めると、けっこう長く続ける方が多いです。当院では10年以上続けている方もけっこういらっしゃいますよ。といっても、何であれ薬を毎日服用し続けるということに抵抗のある人は多いですね。だからいつまで続けるのか、どこで切り上げるのかということは、やはり課題です。

HRTはしたくないがサプリメントは飲むという人も そうなんです。サプリメントがこんなにたくさん使われているとは、最近知ってちょっとびっくりしています。エストロゲンはいやなのにイソフラボンがいいと思うのは、「植物性で天然、自然のものだから安心」ということだと思いますが、サプリメントの種類や量、質によって安全なものばかりとは限りません。
ですから、今年はサプリメントについて勉強しなくちゃいけないと思っています。

 更年期という「人生の踊り場」にたって思うこと 
先生自身の健康管理はどのようになさっているのですか この年になって思うのは、やはり食生活の大切さですね。実は学生時代には朝食をとる習慣がなかったんです。(笑)今は朝食をとらないと、一日体調が良くありません。
若い頃は、どうしても食事は「空腹を満たす」、「好きなものを食べる」、という意識が強くて、こんなに人生の後半に影響するほどの重大なものとは認識していないものですよね。でも、たとえば骨の健康一つとっても、10代でカルシウムをきちんととっているかどうかで、将来の骨の質、骨粗鬆症のリスクが明らかに違うというデーターがあるのです。骨だけでなく、高脂血症、高血圧など今話題のメタボリックシンドロームについても同じです。健康の維持に若い時からの食生活が重要であるということが、今、理論的に証明されてきています。

子どもや孫など、後の世代にも食の大切さを伝えていかないといけないですね。 そうですね。運動についても同じことが言えます。健康に不安を感じてから習慣付けることはなかなか難しいものです。こういったことを若い人に言ってもなかなか理解してもらえませんが、気づいた時から始めるよりないですね。
更年期というのは「階段の踊り場のようなもの」とよくいわれます。立ち止まってこれまでの人生とこれからの人生を見直す時期ということしょうか。でも、そこで立ち止まって、先を見てもあるのは老年期なんですよね。つまり同じ20年でもこれまでの20年とこれからの20年は明らかに違ったもので、その辺をもう一度リセットする時期なのかもしれません。もちろんHRTも不老長寿の薬ではなく、すべてを解決するわけではありません。それらを十分認識しながら、できるだけ快適に、どんなふうに進んでいったらいいか、私も患者さんとともに考えたいと思っています。

じっくりと一つ一つの質問に答えてくれる誠実なお人柄で、長いおつきあいの患者さんが多いというのもうなずける先生です。
それまでの人生を、階段を駆け上がるようにしてすすんできた人も、更年期は踊り場でちょっと一休み。そして、食べることや運動などの生活習慣をもう一度見直したいですね。健康維持と疾病予防のアドバイザーとしても、一度は婦人科を受診しましょう。
(取材:メノポーズを考える会


  
安江育代(やすえいくよ)先生
1948年 大阪府生まれ
1974年 東京慈恵会医科大学卒業(医学博士)
同大学産婦人科に約16年間勤務し、主に不妊症、婦人科内分泌を中心に研究。
1991年2月 安江レディースクリニック開院
思春期を含めた月経不順、月経異常、不妊症から更年期の健康管理まで、幅広くじっくりと相談に乗ってくれる先生です。
 
安江レディースクリニック 
http://www.yasuelc.com
〒103−0024 東京都中央区日本橋小舟町15−15 ルネ小舟町ビル4F
TEL 03−3667−0085 
東京メトロ日比谷線・都営浅草線「人形町」駅徒歩3分
半蔵門線「三越前」より徒歩6分、または「水天宮」より徒歩7分
月〜金まで 午前10:00〜13:00 午後15:00〜18:00 (要予約)
水(午後)・土・日・祝日は休診。


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