いつ産むか、産まないか
日本人の妊娠の実態
日本では「妊娠できない」と悩む人が少なくない一方で、予想外の妊娠に戸惑う女性が多いことも事実です。
以前のものですが、海外のデータによれば、日本人の妊娠は「望んだ出産」が36%、「予定外の出産」が36%。「望まない出産」が3%、「中絶」が25%となっています。つまりもともと予定して妊娠・出産したケースは3分の1程度となっています。
一方、フランス人の妊娠は「望んだ出産」が66%、「予定外の出産」が12%、「望まない出産」が3%、「中絶」が19%となっており、もともと予定して妊娠・出産したケースは3分の2となっています。
また、国内の統計報告によると、全妊娠数に占める中絶の割合は10代が最も高く、続いて40代後半女性と続いていることからも、日本では年齢に関係なく避妊や計画的な妊娠・出産に関する情報が不足していることが伺えます。
意図しない妊娠を避けるために
妊娠を希望しない場合は、確実な避妊法を選ぶ必要があります。また、その避妊法は女性が主体的に使用できるものであることも大切です。
女性が主体的に使用できる避妊法とは、パートナーに伝える伝えないに関わらず、パートナーの協力に依存せず女性自らが選択できる避妊法です。
確実で女性が主体的に使用できる避妊法で、現在日本で使用できるものとしては、低用量経口避妊薬(OC)や子宮内システム(IUS)といったものがあります。
なお、コンドームは性感染症の予防には使えても避妊は不確実であること、また避妊に失敗したときには緊急避妊法(EC)を適切に使用することによって妊娠の確率を減らすことができることも知っておく必要があります。
さらに、もし意図しない妊娠が分かったときには女性にはその妊娠に関して産むか、産まないかを決める自己決定権があり、産まない選択肢として中絶法があることも理解しておく必要があります。
セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツについて
セクシャル・リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康と権利)という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
セクシャル・リプロダクティブ・ヘルスとは、性や子どもを産むことに関わるすべてにおいて、身体的にも精神的にも社会的にも良好な状態であることで、セクシュアル・リプロダクティブ・ライツは、自分の意思が尊重され、自分の身体に関することを自分自身で決められる権利のことで、国際的に取り組みが進んでいる課題です。
具体的には、人々が安全で満ち足りた性生活を営むことが出来、産むか産まないか、産むならいつ何人産むかを自分自身で決めることができ、また安心安全な妊娠・出産ができるという事に加え、家族計画や性感染症、不妊、疾病の予防・診断・治療などの必要なサービスを必要な時に受けられることなどです。
妊娠は女性のカラダに起こるものですので、妊娠するかしないか、産むか産まないかは女性が最終的に決めることになりますが、なにより大切なのは、どのような選択肢を選ぶ場合でも、正しい情報を得たうえで決断を下せるということです。
避妊は産みたいときに産むための手段でもある
避妊は妊娠を避けるためのものですが、同時に今は妊娠を避けたいがいつか妊娠したい時までの手段でもあります。
低用量経口避妊薬(OC)や子宮内システム(IUS)といった確実で女性が主体的に使用できる避妊法は、使用をやめればもともとあった妊孕性(妊娠する力)が戻る避妊法です。
例えば、妊孕性がちゃんとある女性であれば、学業やキャリアスタート時期にはOCを利用し妊娠を避け、妊娠を望んだ時にOCをやめれば計画的な妊娠・出産が可能です。
ただし、妊娠・出産には適した年齢があり女性が妊娠できる時期は限られています。一般的に健康な女性でも35歳を過ぎると妊孕性は落ちてきますので、いつか妊娠したい場合は自身のライフキャリアを考えながら妊孕性が高いうちに妊娠の計画を立てることが重要です。
また、性感染症や月経痛などを伴う子宮内膜症といった病気を放置しておくと35歳前であっても妊孕性を低下させることが分かっていますので、このような病気の予防や早期治療のためにも定期的な婦人科検診で自身のカラダの状態を把握しておくことも大切です。
一般社団法人 日本女性医学学会認定女性ヘルスケア専門薬剤師/松原 爽