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-女性の健康について- このページは更年期の症状に関する記事です。

「女性ホルモン値が低い」と言われたとき、確認しておきたいこと(「E2」、「FSH」という数値の読み方について)

 

更年期前期、女性ホルモン値は大きくゆらぎます

「婦人科で血液検査をしたら『ホルモン数値が下がっているので更年期ですね』と言われました」

「ホットフラッシュやイライラ感などの症状がつらいのですが『女性ホルモンはまだ出ているので更年期ではありません』と言われ、どうしたらいいかわかりません」

どちらも、電話相談によく寄せられる質問です。更年期とは閉経前後の10年間を言い、閉経とは卵巣が機能を停止し、エストロゲンなど女性ホルモンの分泌が低下し、やがてゼロになることを指しています。

そこで知っておきたいのは、血液検査で測定できる女性ホルモン数値の読み方です。まず「下がった」「下がってない」という言葉だけでなく、正確な数値を見てみましょう。

検査でわかる女性ホルモン数値

E2 血中エストラダイオール (単位:pg/mL) エストロゲン(卵胞ホルモン)の一種。最も作用が強くエストロゲンの中心的なホルモン。閉経の約2年前からじわじわと減少するとされ、閉経の半年ほど前からは、急激に減少する
 ・20~40代前半(性成熟期)の参考値   
 卵胞期 19.0~226.0  
 排卵期 49.0~487.0   
 黄体期 78.0~252.0   
 *妊娠中 780.0~44915.0
・40代後半~の参考値    
 閉経期 39.0 以下(測定不能の場合も)  
FSH 卵胞刺激ホルモン (単位:mIU/mL) 

下垂体から分泌され卵巣に作用しエストロゲン(卵胞ホルモン)の分泌を促すホルモン。卵巣機能が低下してくるとこの数値が上昇するため、閉経の7~8年ほど前からじわじわと上昇する  
・20~40代前半(性成熟期)の参考値 
  卵胞期 1.0~12.0   
 排卵期 9.0~26.0   
 黄体期 3.0~20.0 
・40代後半~の参考値(mIU/mL)
 閉経期 18.0~153.0

※参考値は検査機関によって多少幅があります

下がるE2(エストロゲン)、上がるFSH(卵胞刺激ホルモン)

女性ホルモン値としてはE2,エストロゲン値がよく知られています。上記の表にも示したように、20~40代では卵胞期と排卵期、月経前の黄体期で数値は違い、妊娠中には非常に高くなります。

閉経期にも、いきなり減少するのではなくFSHに比べ閉経の直前まで分泌が保たれる場合もあります。日動変動があり、日によって50だったり100だったり、また閉経した後にもわずかに出ていることもあります。

一方、FSHは閉経に向かって数値が「上がる」のが特徴です。卵巣機能の低下に鋭敏に反応し、早い時期から数値が変動しながら上昇していきます。

性成熟期(20~40代)では1~30以下だったものが、100以上にあがることもあります。しかも、一度は50や60まで上がってから、また1ケタ台まで下がったりすることもあります。この変動が自律神経に影響を与え、ホットフラッシュや動悸、イライラ感などの更年期症状につながることもあるのです。

このことから、更年期症状かどうかの診断に際しては、FSHも重要な数字です。特に更年期の前期には「E2はそんなに下がっていないがFSHが上がっている」という場合が起こりますので、FSHの数値にも注目しておくとよいでしょう。

女性ホルモンの低下はあくまで参考に

このように、女性ホルモン数値の測定は、今の不調が更年期によるものかどうかを知る重要な手がかりですが、一度だけの測定で判断することはできず、決定的な条件というわけではありません。

「産婦人科診療ガイドライン婦人科外来編2020」(日本産科婦人科学会)にも

「エストラジオール(estradiol,E2)や卵胞刺激ホルモン(follicle stimulating hormone,FSH)の血清濃度は閉経の約2年後まで大きく変動するため、更年期症状の好発する閉経前後の時期にはこれらの測定は診断上必ずしも有用ではない。したがって、月経周期の変動をもって卵巣機能の低下を推定し、ホルモン測定はあくまで参考にとどめるべきである(CQ406 「更年期障害の診断上の留意点は?」)」
という一文があります。

症状のつらさを重視して医師に相談を


血液検査の結果をもらうと、数値の変動が気になります。しかし、更年期の年齢で月経が不順になってきており、さまざまな症状が出ていたら、ホルモン数値にこだわりすぎず、更年期症状の治療を希望してもよいのです。

ホルモン数値の変動する40代後半は、心もすごく揺れ動く時期です。ホットフラッシュだけでなく、「落ち着かない」「仕事や家事が手につかない」「ふと寂しさがこみあげて一人で泣いてしまう」というような寂寥感の訴えもよくあります。

そこで、更年期医療に詳しい医師は、ホルモン数値だけで更年期かどうかを診断するわけではありません。症状の出方や月経のようすもよく聞いた上で、ホルモン数値を補助的に用い、患者さんの現在の状況を判断してくれると言ってもいいでしょう。

HRTは、更年期に激減するエストロゲン(E2)をややプラスすることでFSHの上昇を抑え、更年期症状を改善する治療法です。もしHRTを行うことで症状が治まってきたら、「女性ホルモンの変動が不調を起こしていたのだな」と考えることができます。

更年期と決めつけず、鑑別診断を受けることも重要

なお、40~60代は女性にとって甲状腺機能障害やリウマチ、うつ病などさまざまな病気の好発期にあたります。さまざまな不調を更年期症状だと決めつけていると、これらの疾患を見逃しかねません。

まず婦人科を受診し、ホルモン数値に変動がなかったとき、あるいはHRTによる更年期の治療を受けてみて、奏功しなかったときは、これらの検査を行ってみることもおすすめします。