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-女性ホルモン- このページはその他ヘルスケアに関する記事です。

エクオール│エストロゲン様作用を持つ食品成分 

エクオールは大豆イソフラボンの代謝物

女性ホルモンのエストロゲンに似た働きをする植物性成分といえば、古くからよく知られているのは大豆イソフラボンです。納豆や豆腐、味噌、しょうゆなどの大豆食品に含まれるフラボノイド(植物由来の生理活性物質)の一種で、肌や骨の健康、生活習慣病予防にも毎日十分にとるとよいと言われてきました。

近年の研究により、大豆イソフラボンは体内で腸内細菌によって代謝され、エクオールという成分になることがわかりました。ここでは、エクオールという成分についてと、エクオールを食品(サプリメント)として摂取する場合について解説します。

大豆には大豆タンパクや大豆サポニンなど、さまざまな栄養が含まれています。その中で大豆イソフラボンの一種のダイゼインという成分が、消化管の中で分解され腸内細菌に代謝されてエクオールになります。エクオールは体内に吸収されると、女性の体のさまざまな場所にあるエストロゲンの受容体にはまりこみ、健康効果を発揮すると考えられています。

エクオールを作る腸内細菌とは

しかし、すべての人の体内で、食べた大豆イソフラボンがエクオールに代謝されるわけではないようです。エクオールをつくる腸内細菌は「ラクトコッカス20-92」という乳酸菌など、15種類ほどが確認されています。これらの腸内細菌を腸の中にもっていればいいのですが、そうでない場合、エクオールを作ることができないことになります。

エクオールを作れる人、作れない人

日本・中国など大豆をよく食べる国々では、エクオールをつくる腸内細菌を持つ人が約50%、大豆食の習慣がない欧米では20~30%程度といわれています。また、日本でも、毎日の食生活で大豆を食べる量が少ない若い世代では、この腸内細菌を持つ人が減少し30%程度であるというデータもあります。

エクオール産生能は体調にも左右される

日々の体調によっても、腸内細菌の状態は変わります。たとえば睡眠不足やよくない食事の摂り方が続いたとき、抗生物質などの薬を飲んでいるときなどは、お腹の調子が悪くなり便秘や下痢になることがあります。このようなときは、腸内細菌のバランスが悪くなっているのです。エクオール産生菌を持つ人も、こんなときには十分に活動しない可能性があります。

そこで、エクオールそのものをサプリメントとして摂取するという方法が行われています。

エクオールのエストロゲン様作用

女性の体内で、エストロゲンは自律神経の調節や皮膚・粘膜の潤い、骨の健康などにかかわっています。そこでエストロゲンの減少・枯渇する更年期以降には、自律神経の不調による症状や皮膚の乾燥、骨の減少、動脈硬化などが起きやすくなります。エクオールは、そうした更年期以降女性に対してエストロゲン様の作用があることで健康増進に役だつことが、いくつかの臨床研究によりわかってきました。

エクオールのエストロゲン様作用

エクオールを作れる人は更年期症状が軽い

「体内でエクオールがたくさん産生されている人ほど、更年期症状が軽い」という報告があります。また、エクオール成分を健康食品として摂取した場合の効果として「ホットフラッシュの改善」、「骨量を減少させない」、「首や肩の凝りの軽減」、「糖尿病リスクを示す〈HbA1c(ヘモグロビンエイワンシー)〉の低下」、「動脈硬化のリスク低下」、「目尻のシワが改善」などのデータが報告されています。

なお、この記述は『今日の治療指針』に掲載されている、大塚製薬保有の「SE5-OH」(乳酸菌ラクトコッカス ガルビエによって調製されたエクオール含有食品。1日量10㎎)のエビデンスに基づいています。現在、各社よりエクオール含有サプリメントが販売されており、エクオール産生菌の種類やエクオール含有量は商品によってさまざまです。詳しくは各社にご確認ください。

更年期医療・女性医療における代替療法として

エクオールを取った方がいいのはどんな人?

エクオールは、更年期症状のある人にとってどのような使い方ができるでしょうか。たとえば、40代に入って多少の不調を感じるが、薬を処方するほどの症状ではないとか、何らかの理由でHRT(ホルモン補充療法)は使えないが、食事のとり方など生活習慣の改善だけでは不十分というときに、提案できる「補完代替療法」のひとつといえます。

また、HRTや漢方薬などで現在更年期治療を受けている場合に、エクオールを同時に使うことも可能です。最近では、50代以降で起こりやすい手指のこわばりや腫れ、しびれなどに対して症状を緩和するのに役立つという医療機関からの報告があります。手指の痛みは、産後の女性ホルモンが変動する時期にも起こりますが、これについてもエクオールによる予防や症状緩和の可能性があると考えられます。

エクオールは食品成分、即効性は期待しない

ただし、エクオールは食品成分であり、そのエストロゲン様効果はHRTの1,000分の1 ~ 2,000分の1程度とされています。つまり、エクオールの持つエストロゲン様作用は非常に穏やかなので、医薬品であるHRT製剤のように使い始めて数日~2週間程度で効果が実感できるものではありません。

2~3カ月程度使い続けるなど、食品のひとつとして日々の生活に上手にとりいれることで、女性ホルモンの変動によって起こる不調を和らげ、健康増進を図る手助けになると考えられます。

エクオールの抗エストロゲン作用

エストロゲンより先に受容体に入ろうとする

エクオール成分のもうひとつの特徴は、「抗エストロゲン作用(アンタゴニスト:拮抗作用)」という働きです。これは、エクオールがエストロゲンより先に受容体にはまりこむことによって、エストロゲンの過剰な働きを抑えるという作用をさしています。

エクオールの抗エストロゲン作用

エストロゲンと聞くと乳がんを心配される方も多いと思います。このため、エストロゲンに似た働きをするエクオールも、がんを増殖させるのではないかという見方が一時期ありました。しかし、エクオールではこの抗エストロゲン作用により、骨や血管、皮膚などではエストロゲンのように働きつつも、乳房や子宮ではエストロゲンの過剰な刺激を抑えることになり、乳がんや子宮疾患の予後に影響を与えないと考えられます。

このことにより、エクオールは乳がん治療中のホルモン療法による更年期様症状を和らげる可能性が、医療機関より報告されています。ただし、実際の使用にあたっては必ず、かかりつけの乳線専門医にご相談ください。

乳がんに関しては、日本でもその患者数が増えていますので、エクオールなどのサプリを使用しているしていないに関わらず定期的な検診が重要です。

なお、エストロゲンを補充するホルモン補充療法(HRT)による乳がんリスクに関しては下記を参照してください。

ホルモン補充療法(HRT)

30~40代前半、ゆらぎ期の体調管理にも

女性は1か月の月経周期の中で、排卵期にはエストロゲンの分泌が多く、黄体期には少ない(黄体ホルモンの分泌が多い)という周期的な変動があります。この変動が“ゆらぎ”といえ、女性の体にはよいことも悪いこともさまざまな影響が起こります。

女性ホルモンの周期的なゆらぎは体調に影響する

これに対し、エクオールは「エストロゲン受容体にはまり込む」という作用により、“ゆらぎ”の影響を緩和すると考えられます。エストロゲンが足りないときには、エストロゲンの代わりになり、エストロゲンが過剰なときにはその作用を抑えてくれるというわけです。40代は閉経に向けてエストロゲンが少しずつ減少してくる中、周期的な“ゆらぎ”の幅も大きくなり、月経周期の乱れや不調につながると考えられます。女性ホルモン値を測ってまだそんなに低下していない場合、ホルモンバランスも悪いわけではありません。強いホットフラッシュなどで仕事や生活に明らかに支障のあるときは、婦人科を受診してホルモン補充療法(HRT)による治療をおすすめしますが、それほどでもなく、“ゆらぎ”による不調かなと思うときは、まずエクオールを試してみる方法もあります。

PMSや産後うつ

40代でまだ月経がある場合、更年期症状のように思えるめまいやイライラが、PMS(月経前症候群)の症状の場合もあります。

また、「エクオールの産生能の少ない人のほうがPMS症状はつらい」という報告があります。エクオールが体内にあったほうがPMSにもいい影響が期待できるので、症状のひどさにもよりますがエクオールを試してみるのもいいでしょう。

食事でも十分に大豆製品を

初潮の始まる10代から閉経してエストロゲンレベルがゼロになるまで、女性の体は女性ホルモンによって守られていると同時に、左右されているともいえます。そこで、エストロゲン受容体にはまり込む働きを持つエクオール成分は、生涯を通じてその左右される状態を緩和してくれるといえるでしょう。古来から日本食は味噌、醤油、豆腐、納豆など、大豆とともにありました。日本女性の健康は、大豆に守られてきたといえます。エクオールをとるとともに、食生活でも大豆製品をたくさん取り入れるようにしましょう。

医療ライター/南雲つぐみ