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-女性の健康について- このページはPMS・月経にまつわる症状に関する記事です。

月経前(黄体期)の過ごし方を見直そう。むくみを抑えてPMS(月経前症候群)の症状を軽減

黄体期をマネジメントして月経前を快適に過ごそう

PMSかどうかのチェックは月経との関連でみる

「この症状は、もう更年期かも?」
イライラ、精神不安定、集中力欠如、だるくて動けない…。30代後半から40代にかけてそんな症状が出ると、更年期のせいにしがちかもしれません。

イライラの原因は何か。そこで確認したいのは「毎月の月経周期はどうなっているか」という視点です。症状だけで見ていくと、PMS(月経前症候群)と更年期症状はかなり似ているところがあります。特に40代後半になると、どちらか見極めがつきにくくなります。

しかし、月経周期との関連でみると、むしろPMSと更年期症状は真逆な状況で起こるといえます。

〇月経は周期的に来ているか(YES NO)
〇症状は月経の3~10日前に重く、月経が始まると治まるか (YES NO)

この2つに「YES(はい)」ならPMSの可能性が高いといえそう。もちろん、自己判断するのではなく、一度は婦人科の更年期外来やPMS外来を受診してください。背後に婦人科系の病気が隠れていないかを調べることは重要ですし、PMSには 低用量ピル(OC・LEP)など処方薬による対処が有効だからです。

黄体期の生活習慣、まず何を見直したらいいの

PMSによる不調とわかっても、40代後半になると血栓症の発症リスクがやや増えるというデータがあり 低用量ピル は適用にならない場合もあります。また、ピルは排卵を抑制する作用を持つため、妊娠を考えている場合には使いにくいものです。

薬物療法を行うかどうかとは別に、誰でもできて有効なのは、食事や運動など生活習慣の見直しを黄体期に行うことです。下図に示すように、黄体期とは排卵から次の月経までの約2週間ぐらいをいいます。

「PMSがつらいのは月経前の数日だけなのです」という場合も、この黄体期全体で血糖値の変動やむくみをコントロールしていくことで、PMSの予防になるという考え方です 。

「月経前だからしょうがない」の食べ方を見直そう

「月経前はお腹が空いてしかたがない」
「甘いお菓子や揚げ物のようなボリュームのあるものをドカ食いしたくなる」

月経の前になると、甘いものや刺激物がむしょうに食べたくなることがあります。食べると、イライラが収まり落ち着いた気分になったり、元気になった気がします。これは食べることで食後の血糖値が上昇するからです。

しかし、急激に上がった血糖値は、急激に下がります。(下のグラフの青い線を参照)低血糖になるとアドレナリンが放出され、イライラ、神経過敏、疲労感、集中力の欠如などが起こりやすくなります。

黄体期は、プロゲステロンの影響でこのような血糖値の変動が起こりやすくなるのです。

食べたい気持ちを無理に抑えこもうとせず、「食べても太らない食べ方や食材を選んで、しっかり食べる」を心がけましょう。

まず、食事は朝からきちんととることです。主食には、玄米や全粒粉など精製されていない炭水化物を使い、野菜やきのこ、海藻など食物繊維の多いおかずをよく噛んでゆっくり食べます。

すると、下のグラフの赤いラインが示すように、血糖値の変動がなだらかになります。気分も安定するので、落ち着いて過ごせることになります。

時間がないから菓子パンとコーヒー。というよりは、玄米おにぎりとインスタントでもわかめのみそ汁、オートミールがゆなどのほうが血糖値の安定にはプラスです。

<「自分にごちそう」の甘いお菓子はむしろイライラのもと>

朝、しっかり食べる効果は午後まで続く

 野菜や果物、キノコ、海藻類、精製されていない穀物など、食物繊維の多い食材は血糖の上昇を抑えてくれます。そこで、朝に食物繊維の多い食事をしっかりとっておくと、午前中の気分が安定しやすくなります。

そして、午前中の食物繊維の効果は約6時間続くと言われています。つまり、昼に外食で糖質の多いものを食べても、血糖値が上昇しにくくなるということです。このような、朝一番の食物繊維が次にとった食事の後の血糖値も上げにくくする作用を「セカンドミール効果」といいます。

体調が悪くて1日寝ているときにも、朝はいったん起きてカーテンを開け、朝日を浴びましょう。そして、もしおなかがすいていなくても、セカンドミール効果を期待して朝食をとります。

このほうが、昼すぎまで眠って強い空腹を感じてからドカンと食べるよりも血糖値が上がりにくく、気分にも体重にも影響しないのです。

GI値の低い食材を美味しく食べよう

GI値(グリセミックインデックス)とは、食後の血糖値の上昇スピードを示す指標です。これの低いものを食べることで、糖質として吸収されにくく、血糖値の上下動をできるだけ防いでくれます。

玄米、全粒粉のパンやパスタ、そば、オートミール、キノコ類、卵、鳥むね肉などはGI値が低い食べ物です。逆に、白米や精製した小麦のパンやパスタは高GI値の食品。一方、同じ野菜類でもイモ類はGI値が高い食材。果物を使っていても、缶詰やジャムになると高GIですから気を付けて。

ふだん食べる主食やおやつの材料を選ぶだけで、血糖値のコントロールに役立ちます。鶏むね肉やきのこ類ではボリュームもなくてつまらない……と思ったら、オリーブオイルで和えたり、炒めたりするのがおすすめ。オリーブオイルはGI値の低い油なので、血糖値を安定させつつボリュームを感じながら食べることができます。

これらの食べ方を習慣にしておけば、PMSのイライラを抑えるのによいだけではありません。40~50代に入ると起こりやすい高血糖や太りすぎ を防ぎ、更年期から先のダイエットにも応用できるでしょう。

不要な水分の排出を促し、むくみを予防しよう

特集①②でも解説したように、プロゲステロンの影響で体に水分が貯留しやすくなります。このむくみによる症状が、PMSによる身体症状の多くを占めることがわかっています。

<こんな不調は、むくみ(水分貯留)によるもの>
〇寝起きに顔が腫れる
〇手足がむくむ
〇頭痛
〇体重増加
〇だるさ
〇疲れやすい

月経前になると顔がむくみ、体重が1~2キロも増加するという人は「太った」のではなく「むくみ」です。これを予防することで、PMSのイライラも起きにくくなる可能性があるということです。

まずは、黄体期には体に水分をため込まないよう、塩分の強いもの、味の濃いものを控えるところからはじめましょう。塩辛い漬物はピクルスに変えるなど、お酢やスパイス、だしなどを上手に使うと、塩味が薄くてもおいしさを感じ取ることができます。

野菜や果物によく含まれるカリウムは、体のミネラルバランスを整え、摂りすぎた塩分(塩化ナトリウム)の排出を助ける働きがあります。 

果物 アボカド、キウイ、リンゴ、バナナ、メロン、干し柿 など
野菜 ほうれん草、きゅうり、ナス、モロヘイヤ、小松菜、ブロッコリー、ニンジン、かぼちゃ など
芋類 長芋、里芋、さつまいも
豆類 納豆、小豆 アーモンド、落花生 など

野菜は毎日たっぷりと。鍋料理や温野菜で体を温めつつ水分排出を促しましょう

禁煙、節酒、カフェインのとり過ぎにも気を付けて

もし喫煙していたら、ぜひ禁煙をおすすめします。

アルコールはほどほどに。ビールや日本酒、ワインなど蒸留酒は糖質を多く含むし、月経前は黄体ホルモンもエストロゲンも分泌が高まるために肝臓のアルコール代謝が遅くなります。二日酔いしやすいし、お酒の水分も体に残りやすくなります。頭痛や肩こり、だるさ、胃のむかつきの隠れた要因にもなるでしょう。

カフェインを含むコーヒーや紅茶は水分を排出する作用があるとされますが、とり過ぎはよくありません。刺激物なので睡眠の質にも影響します。

軽い運動で血糖値を下げ、肩こりやむくみの解消を

月経前の不調のときに、強い運動などしたくないのは当然です。でもまったく体を動かさないと、さらに代謝が悪くなります。散歩をするなら食後15分後くらいからがおすすめ。30分ほど歩けば、食事で取った糖質が消費されます。

つらいときはベッドで横になったまま、手足を伸ばしたり、首をまわしたりするだけでもいいのです。それだけでも日課にすることで血行がよくなり、体があたたまって水分が排出されやすく、むくみを防ぐことにつながります。

PMSや月経時の肩こりは、血行が悪いために首や肩まわりの筋肉がこっていることも影響しているかもしれません。座ったままで肩甲骨を動かす運動をするだけでも、肩や首がスッキリし痛みを和らげてくれます。

お風呂はシャワーでなく、ゆったり湯船につかることが体を温め、水圧により全身マッサージにもなります。気分が悪くて入浴も難しかったら、肩や首の後ろ、肩甲骨まわりをホットパック などで温めると背中の緊張がほぐれて楽になります。

更年期だけでなくPMSの不調にも、簡単エクササイズを

「γ-トコトリエノール」の水分排出作用とは

むくみとPMSの症状は、相関することがわかっています。そこで婦人科でも、PMS治療に利尿剤を処方されることがあります。ただし、人によっては利尿剤を飲むことでトイレが近くなりすぎたり、のどが渇く、だるいなどの作用が起きることもあります。

そこで食事や運動の工夫以外には、水分の排出を促す働きのある成分をサプリメントなどで取る方法もあります。

大豆油やこめ油など、植物の油に多く含まれるビタミンEの一種で「γ-トコフェロール」と「γ-トコトリエノール」には、からだのナトリウム・カリウムバランスを調整して、よぶんな水分を排出する働きがあることが分かっています。

これは、ナッツ類や緑黄色野菜に多く含まれるビタミンEのα-トコフェロールとは違う性質をもつもので、「むくみ軽減」を目的とし、サプリメントなどに使用されはじめています。

では、γ-トコフェロールとγ-トコトリエノールは、なぜむくみ改善に役立つのでしょうか。

この2つはどちらも体内で「γ-CEHC」という物質に変わり、「ナトリウム利尿ホルモン」作用があるとされています。体内にナトリウム量が多くなり過ぎて、水分をため込んだ「むくみ」の状態が起きたとき、腎臓で尿を増やしてナトリウムを体外に排出するというわけです。

中でも、γ-トコトリエノールは、γ-トコフェロールよりも効率良くγ -CEHCに変換されるとして注目されている成分です。

黄体期に、γ-トコトリエノール、γ-トコフェロール、エクオール、カルシウムの4つの成分をとることで、むくみ(水分貯留)を抑え、イライラや怒りやすさなどの精神症状も軽減するという研究報告が行われています。(日本女性医学学会雑誌:29(4):578-587、2022)

エクオールとPMSについて

エクオールは、体内でエストロゲンに似た働きをするということで、特に更年期の不調には役立つことがよく知られています。エクオールについてはこのホームページでも紹介しており、多くの人に読まれているページです。

エクオールについては、PMS症状との関連でも研究が進んでいます。

ー体内でエクオールをつくれる人は、PMSになるリスクが低い(出典: 産科と婦人科; 83(12): 1434-1439, 2016)「PMS/PMDDの治療法 – サプリメント」上野友美 大塚製薬株式会社佐賀栄養製品研究所ー

上記の論文では「エクオールが作れる人は月経前の肌トラブルが少ない」といった報告も行われていています。エクオールが体内にあったほうが、PMSにもいい影響が期待できるというわけです。

黄体期のセルフケアでずっと快適に過ごしましょう

ここでは、PMS症状への対策として、黄体期に起こりやすい血糖値の変動ととむくみを生活の中でどう予防・改善するか、そして、PMS対策として「γ-トコフェロール」と「γ-トコトリエノール」「エクオール」についてご紹介しました。

食事のとり方、睡眠、メンタルケアなど、セルフケアを行っている人のほうが、仕事や家事のパフォーマンスは安定しているということが、さまざまな研究で明らかになっています。PMSに限らず、月経の前も後も女性が快適に過ごせる時間を増やし、やりたいことにベストコンディションでとりくめる体調づくりをしましょう。